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「おとうさんのポストカード」講談社 第二次世界大戦の中で6歳の少年とお父さんが交換した愛のポストカード
これは実話です。
第二次世界大戦の前夜、迫害を受けるユダヤ人の子どもたちを救った「いのちの列車」キンダートランスポート。
乗れるのは子どもだけ。運良く乗り込むことができたハインツ少年だが、それは最愛の父との別れでもあった。
ドイツのベルリンに残り、他のユダヤ人たちの亡命を助けながら、なんとか息子のもとへと、足の悪い祖母とともに何度もけんめいに脱出を試みる父。
その間に、父は、ヘンリーと名前を変えて暮らし始めた息子に、元気でいるか問いかけつつ、なにげない日常をつづったポストカードを送り続ける。
だが、戦争が始まり父からのポストカードが途絶えてしまったとき、ヘンリーはおとうさんに捨てられたのではと不安になるのだった…。
そして戦後におとうさんの真実を知ったとき、ヘンリーは気がつくのだ。どれだけ自分が愛されていたかを。
戦争は人の何を奪うのか、あらためて考えてながら書き下ろした作品です。
もともとはジャーナリストの中村真人さんが取材し記事にまとめたものを読ませてもらい、まだ存命されているヘンリーさんの許諾をもらい資料のポストカードをお借りし、子どもの読者にも伝えられるよう、ぼくが物語化したものです。
書きながら、僕も父ととして、子として涙が止まりませんでした。
戦後80年の今、ぜひ読んでもらいたい作品です。
『武蔵野』国木田独歩の名作短編を那須田がリライト
『武蔵野』
国木田独歩の名作短編「武蔵野」「初恋」「非凡なる凡人」「運命論者」を僕が現代語にリライトしたもの。理論社の「スラよみ!」シリーズの一冊
みなさん、独歩の作品って読んだことありますか? 作者の名前は知っていても作品は…。という方も多いのでは?
ただ、独歩はまちがいなく明治の文豪で、文学史的には欠かすことのない作家なのです。
森鴎外、二葉亭四迷のあと、島崎藤村、田山花袋、夏目漱石を経て芥川龍之介、さらに太宰治、三島由紀夫、村上春樹とつながる大きな流れの中で、独歩はその表現と文体で、現代小説のリアリティと心理描写の基礎を提示した先駆者だと僕は思います。その意識のもとで選んだ「武蔵野」「初恋」「非凡なる凡人」「運命論者」では、それぞれの作品にマッチしたと僕が思う文体でリライトしてみました。「初恋」はちょっとアメリカンYA風に訳してみたので、興味があればぜこ。