青熊ラジオ

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ずっと最高のパパ     おさがり      

「おさがり」

 

 先日、次女が小学校に入学したので(ドイツでは九月が年度始まり)、これからは自転車での通学もあるかと思って、長女に新車を買い与え、次女にはそのおさがりをまわすことにした。家庭の経済学でいえば、こういうのはあたりまえだろうと思うが、いつもこういう役回りだと、次女がかわいそうになる。長女がピカピカの新車を察そうと走らせているうしろで、次女が初めて自転車に乗れるうれしさにはじけそうな笑顔で、古いペダルをぎこぎこやっているのを見るとなおさらに。それで途中で寄ったアイスクリーム屋で、せめてもの気持ちで次女に「パパのアイス、少しなめてみる?」ときいてみた。でも、次女はちらっとぼくのアイスを見て「それってレモンでしょ、べー、いらない」と、すげなくされた。親の心、子知らずとはよく言ったものだ。

 ところで、この次女の補助輪は、初めて自転車に乗った日にはずれた。というか正確に言うと、近所の川沿いの広場まで補助輪をつけていって、そこで外して、もうおしまい。長女が、膝や腕に青あざをつくり、泣きながら一週間以上もかかったのとは大違いだ。

 

 

だからといって次女のほうが、運動神経がいいというわけではない。考えられるのは、長女が自転車に乗るまで三輪車だったのに対して、次女はライクアバイクだったことか。サドルにまたがり、ペダルのかわりに足でけりながら走るライクアバイクで、自然にバランス感覚が養われていたのだろう。

 ドイツでは今はみなこれで、三輪車はほとんど見なくなったが、いずれ自転車に乗るのだし、効果を考えればこっちを選ぶのもとうぜんかもしれない。

 それにしても次女が乗っていたライクアバイクも、ネットで購入したもの。いわばおさがりだった。子どもは二人だからこれでおしまい。個人的にかなり気に入っていて、娘たちとの思い出もつまっているので、いよいよお別れかと思うと少し寂しかった。うちの奥さんは、整理整頓好きで、その極意は不要なものはすぐに処分することだそうだ。一方、僕は使えそうなものはとっておく主義なので、バトルになるのだが、このごろは僕の負け続け。おかげで家はいつも比較的すっきりしていて、散らかっているのは、奥さんが触らない僕の机のまわりぐらいだ。

 

 

 

当然ながら娘たちの不要になったものもほとんど残っていない。そんなとき次女が僕のところにライクアバイクをひきずってきて、

「これは宝物なの、わたしの子どもにあげたいから、パパのとこにかくしておいてね」

 次女は、奥さんに捨てられたくないものはいつも僕のところに持ってくるのである。 さすがにこんなに大きなものは、机の下に置けないから、要相談だが、

「大事なものだったら、ママだって、わかってくれるからだいじょうぶだよ」

 僕はそう応えて、二十年先へのおさがりか…とつぶやいた。自分の孫のことを考えたのは初めてだ。

 

 

(フリーペーパー「自転車生活と人と地球の応援マガジンGreen・Mobility」(インタープレス)に連載中のエッセイ「ちょっとそこまで」のVol.6より転載

 

©Jun NASUDA2009