「やっぱりネコが好き」 年末は日本に長くいたこともあって、忘年会続きであった。そんな中つい盛り上がりすぎて、作家仲間に乗せられて一度だけカラオケにいったのである。僕は音痴だし、あのざわざわ感が「んー、なんだかちょっと」とこれまで敬遠したせいで、マイクをにぎるのは、じつに十四年年ぶりのことだった。 「聴いてるからいいよ」と抵抗してみたものの、作家仲間に、「これなら歌えるだろう」と、勝手に選曲されたのが、「宇宙戦艦ヤマト」の主題歌。 で、えーいしょうがないと歌い恥をさらした僕のあとをついで、編集者の一人が歌いだしたのが、「サン・トワ・マミー」のRCサクセション・バージョンだった。この曲は、反核、反原発で話題になったRCサクセションの「COVERS」に収録されていたもので、僕は忌野清志郎の歌うこのバージョンが一番好きだ。
「夢のような/あの頃を/思い出せば/サントワマミ/寂しくて/目の前が暗くなる(訳詩・岩谷時子参照)」
| ちょっと女々しい歌詞で、たしか原曲は、男に振られた女の歌ということになっていたと思うけど、もともとアダモの歌だし、ほんとは逆なんじゃなかろうか。清志郎もここでは、男の視点で歌ってるしね。 それでマイクをもう一本もらってつい一緒に歌ってしまったのだが、歌いながら、そういえば・・・と、この曲が、昔フジテレビ系でやっていた「やっぱり猫が好き」のエンディングで流れていたのをふと思い出した。もたいまさこ・室井滋・小林聡美の三姉妹がマンションの一室で繰り広げる騒動をコミカルに描いたあの名作連ドラである。 あの番組に、実際に猫は、ほとんど気配でしか出てこないけれど、そういうところも猫的で、とってもすぐれていたと思う。 「犬派」「猫派」でいえば、僕はやっぱり猫派だ。この数年、わが家ではドイツの「猫の文学カレンダー」というのを愛用しているぐらいだ。これは週間カレンダーで、週ごとに、猫にまつわる小説や詩の一節が紹介されている。ヘッセやヘミングウェイなどの世界中の作品から抜粋され、何年か前には夏目漱石の「我輩は猫である」もちゃんと載っていた。 | ちなみに「犬の文学カレンダー」はない。犬を扱った小説がないわけじゃないけれど、猫に比べたら少ない。そのあたり作家心をくすぐるなにかを猫のほうがより多く持っているのだろう。 わがままで、自己顕示欲がつよいくせに構われるとうっとうしがる…といったキャラで、しかもときどき抜けているというところが、猫に惹かれる所以だろうか。 今年の干支は子。ねずみにだまされて干支に加えてもらえなかった猫の話を娘に読んでやりながら、東京の家の庭にこのところ現れるようになったノラのぶさ猫のことを考える。僕はこれから春までドイツにいるのだが、ちゃんと寒さを乗り越えられるかちょっと心配である。でも、娘を膝にのせつつ猫のことを心配している、こういう日常こそが幸せなのかもしれない。 とつぜん「サン・トワ・マミー」がもう一度聴きたくなった。
(初出「浜松百撰」2008年1月号。一部加筆改変しました) ©Jun NASUDA2008
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