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恋するマッチ」

 

何年か前のことだけれど、『星磨きウサギ』というラブストーリーを、イラストレーターの吉田稔美さんの挿画で刊行した。これは、先に出したYA青春小説『一億百万光年先に住むウサギ』の一場面に登場する星磨きウサギを主人公に新ためて書き下ろした作品で、いわゆるキャラクターものである。

 だれかを好きになること、そしてそれが自分の人生にとってどんな意味をもつのかを主題に書いたので、想定読者は十~二十代、さらに一般の方々までと広い。バレンタインディも近いことだし、みなさんも、機会があればぜひ手にとっていただきたい。

 で、その作品の出版記念展みたいなものを、そのとき東京の御茶ノ水にある小さなギャラリーで開催したのだ。いつもなら原画展というカタチで、画家の方にすべてお任せしてしまうのだけれど、今回は星磨きウサギというキャラクターが先にあったので、著者も参加するようにと吉田稔美さんに言われ、あれこれと頭を悩ませた。

 

 

とりあえず展示のために詩をひとつ書き、あとはキャラクターグッズとして、「ホッペルツァイトゥング(ウサギぴょんびょん新聞)」というのを、吉田さんと共同で発行することにした。作品を書き上げるまでのいきさつをエッセイにしたり、自分で自分をインタビューしてみたりと、ちょっと学級新聞のノリで面白かったけれど、モノ書きができることといったらせいぜいこのぐらいである。

その点、絵描きさんはいい。原画の展示は当然として、販売用のキャラクターグッズも缶バッチ、ポストカード、一筆箋など自分のイラストを使ってさっさと作ってしまう。その中で、ぼくが「おおっ」と思ったのはマッチである。

作品のテーマが「LOVEなので、軸の頭のところはピンクにしてみました」と吉田さんはへへっと笑った。

題して「恋するマッチ」。ほんとうは頭薬の部分をハート型にできたらよかったのだが、制作コストや技術の関係で、断念したとのこと。

 

 

見本にいくつかもらったのだが、これって「可愛すぎて使いにくいなあ」と言うと、「使っちゃだめよ」との返事。マッチ箱のアートなのだそうだ。コレクターもかなりいるという。実際、年明けそうそうに吉田さんから、東京の青山で開かれるマッチアート展に「恋するマッチ」も出展するねとのメールが届いた。

なるほどそういう世界があるのである。もっとも僕は何かを収集して、部屋に飾っておくのはそんなに好きではない。気に入りのものはむしろ使いたいほうなので、この「恋するマッチ」もいずれしゅっとすってしまうに違いない。でもどこで?

マッチの炎は、それじたいロマンチックだし、火のついたマッチとマッチの頭をくっつけて離れなければその恋は実るなんていう、恋占いにはぴったりのアイテムだろう。独身だったらねえ…。

 

(2007年に浜松百撰に掲載したものを加筆修正した)

 

©Jun NASUDA2007