青熊ラジオ

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2004年4月8日のblogから

 

「テロリスト?」


 昨日のこと。
 朝、娘のMを幼稚園へ送っていこうと車に乗って5メートルぐらい走ったところで、なんだかへんな感じがしたので、ストップして車を調べたら、なんと右の前輪がパンクしていた。これじゃだめだと急遽、娘の送りは自転車に切り替えて、戻ってきてから、ADAC(ロードサービス)を呼んで予備のタイヤを交換してもらい、さらに念のために他のタイヤの状態を確かめてもらおうと車の整備会社にでかけた。パンクの原因なんていろいろ考えられるが、全体的に劣化がすすんでの結果だったら交換をしなきゃならない。我が家はアルトバウという1899年築の古い建物なので、もちろん駐車場なんてものが付随しておらず、路上駐車である。4シーズン用のタイヤをはかせているとはいえ、この厳しいベルリンの冬を5年近く越しているので相当に痛んでいるのではと思ったのだ。一応定期点検はクリアしているが、この冬は温暖の差が激しかったので、急速に劣化したとも考えられた。でも、調べてもらった結果は、まだ問題ないでしょうとのこと。とりあえずほっとする。今週末にライプツッヒに出かけるつもりなので、これで安心してアウトバーンを飛ばすことができる。そういえば右の前輪は一昨年の暮れにも、釘がつきささっていて交換したっけ。こちらは右側通行なので、車道のわきのごみとか石とかを右の前輪は踏みやすいのかもしれない。今後はもう少し気をつけよう。
 ところで点検してもらっている間に、整備会社のカウンターのわきに妙なポスターがでかでかとはりだされていたので、ちょっとぎょっとした。
「WANTED わが社にテロリストが!」とあるのだ。
 この整備会社は支店が多くある大手なので、時節柄、イスラム系過激派の一味が、この社の社員としてもぐりこんでいたのが発覚し、手配書がまわっているのだろうか。ドイツは、かつてのナチ時代の反省から、ユダヤ人とユダヤ教に関してつねに保護と贖罪をしてきた。当然のように親イスラエルであり、その国の首都であるので、イスラム過激派からはしばしばテロの標的にされてきている。もっともそのせいでかえって警備が強化され治安がよくなっているので、生活していての不安はまったくないが。そんなこともあって、過激派の一味がこの会社の社員として潜伏していたのかしらんと思ったのだ。
「わが社に潜んでいるのが発覚したテロリストたちは以下のとおり。発見しだい報告をされたし。名前は、ビンカフェトリンカー、ビンラオハァー……」
ウサマ・ビンラーディンの手配写真のわきに並ぶ名前を見て、やけに変な名前だなあと思っていたら、うちの奥さんが笑い出した。
 「カフェトリンカー」はコーヒーのみ、「ラオハァー」はスモーカーのことで、要は仕事中にコーヒーを飲んだり、タバコを吸いにでかけたりしてさぼるなということである。社の仕事の進行を遅らせ、同僚にも悪影響を与えるのは会社のテロリストとおんなじだ、みな気をつけてくれという「おたっし」であった。ドイツ語では「Ich bin ~」「ぼくは~です」という言い回しがふつうである。ビンなんとかは、そのもじりだ。この会社にはほかにも、長便所とか、長電話、おしゃべり、公私混同、新聞読みすけ、などなどのテロリストが潜んでいて、業務悪化をたくらんでいるとのこと。こういうテロリストならそこらじゅうにいそうである。

2004年4月23日のblogから

 

「パパはいらない」

 

 今日、久しぶりで少し暇になったので、テレビをつけたら、SAT1で、東大の研究所が、オスなしでラットの繁殖に成功したというニュースをやっていた。みなさんもとっくにご存知だと思うけれど、二つの卵子の遺伝因子組み合わせだけで子どもができたというのだ。
 映画の「ジェラシックパーク」で、たしか繁殖をさせないためにメスしか作らなかったのに、進化して子どもを孵していたという怖い展開をしていたのだが、それがSFではなく現実になったということだ。しかも哺乳類で。もしかしたらクローンよりすごい研究なのかもしれない。
 一応、人間には適応はできないというが、ほんとうだろうか? ネズミにできるならできないというのもなんだか怪しい…。
 いつの日かパパが。いらないってことになるんじゃなかろうか。
 父親っていったいなんだろうと、まじに考えてしまった。最近、あまりかまってやっていないせいか、娘たちもちょっと冷たくなった気がするし…。
 ところで、ドイツって、こういう話になるとなぜか異常にもりあがるのである。ふだんは日本のニュースなんてよほどの事件でないと扱わないのに(よほどの事件だったのかもしれないけど)、昨日、今日の話なのに即効で街角インタビューとかばんばん撮っていた。でも、客観的にというより、ついに女の時代の到来だ、男なんてまったく必要なし、えい、えい、おーというスタンスだったような気もして、そう攻められると、うーん……。(近頃、出版界も元気のいいのは女性作家ばかりだしなあ)
 この報道のあと、女性キャスターがやけに元気よく、男のスポーツキャスターにマイクを振って、スポーツキャスター氏が、えっ、まいったなあと、うつむきつつサッカーの欧州チャレンジカップの模様をいつもより小さな声で伝えていたのが印象的だった。
 まあ、ビールでも飲むか。

 2004年4月24日のblogから

 

「間違い電話」

 

「あ、へロー、おれだけどさ、あのさ、今度グレゴを採用するっていう話、ちょっと問題だと思うんだ…」
 じつは、これ、青熊の携帯の留守電に収録されていたものである。携帯の留守電となるとみななぜか一気にまくしたてるものだから、ただでさえドイツ語が苦手な青熊は完全にお手上げである。

 でも、何か重要な用件かもしれない。そう思うので、つい何度も聞きなおし、それでも「?… よくわからん」で、とうとう奥さんにバトンタッチして内容をきいてもらったのが上のようなことである。
「青熊、グレゴなんていつ採用するの?」
「へ? だ、だれ?」
「ばかね、間違い電話よ」
 でも、このほんの一秒ぐらいの間に、どういうわけかグレゴリー・ペックの顔がどーんと浮かんでしまって、しばらく青熊の脳裏から離れなかったのである。『ローマの休日』のときの新聞記者のあの顔だ。
 もちろん、グレコなんてぜんぜん知らないし、この電話の主の「おれ」も知らない。それにしてもグレコのことを「おれ」は良く思っていないのは確かで、じつは、このグレコ、すごいイやな奴なのかもしれないが、なんとなくお人よしのいい人のような気がしてならなかった。

 この就職難にせっかく仕事をゲットしたと思った矢先、グレコは「おれ」に横槍を入れられたのである。かわいそうなグレコ…・もう、青熊にとっては「おれ」が悪役で、グレコは善玉である。

 そんなわけで、青熊は日がな一日グレコの将来を憂えて過ごしたのであった。
 て、迷惑な間違い電話め!
 と書いていたら、自分の携帯の留守電をチェックしていた奥さんが、受話器を耳にあてながら爆笑している。
「なに?」ってきいたら、
「明日のタイル貼りの作業は、都合が悪くなってあさってに延期しますってさ。これ、わたしのとこも間違い電話だぞぉ」