ある日のこと、アラムが図書館からの帰り道、ドラッグストアの喫茶室でアイスクリームの「つぶした胡桃をかけたロイヤル・バナナスペシャル」を食べていると、むこうからロバに乗ってやってきたインディアンに「よおっ」と声をかけられる……。
物語は、貧相に見えるがじつは石油王で大金持ちのインディアンと貧しいアルメニア系移民のアラム少年の日々を描いたものだが、少しセンチメンタルで、初夏の昼下がりに読むのによいだろう。僕は、十二歳のときにこの短編に出会ってしっかりはまってしまったのである。
その頃、鎌倉の新興住宅地に住んでいたのだけれど、もちろんまだドラッグストアなんてものはまわりになかった。二つ上の兄に「ドラッグストアってなに?」ときいて「薬局だよ、ばあか」とぶっきらぼうな口調で教えてもらったのだが、薬局に喫茶室があるというのがどうにも思い浮かばなくて、悩んだものである。しょうがないので近所のスーパーマーケットにいき、そこのカフェテラスでソフトクリーム(残念ながら「つぶした胡桃をかけたロイヤル・バナナスペシャル」なんてものもなかったから)を食べながら、何日も過ごしていた。もちろんそんなことをしてもインディアンなんて通りかかるはずもないのはわかっていたけれど、もしかしたら……とかすかに期待しながら。