青熊ラジオ

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挫折、バナナダイエット     ベルリン熊に捧げるバラード     恋するマッチ     心に残るごちそう      
「挫折、バナナダイエット」

 きっかけは、ベルリンのわが家の台所で、すれちがいざまに言われた娘の一言だった。
「パパ、そのおなか、ちょっとヤバイんじゃない?」
 娘を通すために、無意識に腹をひっこめたのを見とがめられたのだ。
この冬は、ベルリンはとくに寒く、家にこもっていることが多かったせいかもしれない。体が重いと、頭の働きもにぶくなって、文章にも微妙な影響が出るものだ。
 で、またダイエットに挑戦である。ダイエットの基本は食生活の改善か、運動しかないが、どっちがラクかというと、これは食事のほうである。
 極端な話、断食すれば体重は落ちるわけで、数日、食べる量を減らせば、結果はすぐに出る。でも、続けるのはけっこうしんどい。僕の場合、夜、飲むことも多いので、油断するとリバウンドである。それで、食べる量を気にせずにやせるにはバナナダイエットがいいと、知り合いの女優さんからきいたので、さっそく買いに出かけた。

 
 

 ベルリンではバナナダイエットはブームにもなっていないので、ふつうに安いし、スーパーにあふれている。
  ところが、朝、食べようとしたら、バナナがない。
 きくと、娘たちが昨日のおやつにしたとのこと。
「ったく、これだよ」と思って、次には大きな房ごと買ってみた。
 だが、バナナっていうのはそんなに日持ちはしない。日がたち、熟れてキリンの首みたいに斑点が浮かんだきたものは、もったりしすぎて僕はどうも苦手である。とはいえ、娘たちも食べてくれなくなるので、仕方なくまっくろになったバナナをもそもそ食べていたのだが、数日、続けたら人生もまっくろに思えてきた。
 たしかに体重は少し減ったが、むなしい。朝は、やっぱりハムやベーコンをしっかり食べたいじゃないか。
 そこで、もう一つのダイエットの王道である運動のほうをやることにした。過去の経験から、ハードにすると長続きしないは知っているので、ウォーキングぐらいが適当だと始めたのだが…。

 

 

 仕事で日本に戻ってきて近所を歩いてみると、今度は別の問題が。
 朝といっても、八時前後にスポーツウエアでふらふら歩いていると、登校中の子どもたちが、とっても怪しそうに見るのである。
 ちょうどウォーキングコースには、
「地域パトロール強化中、不審者をみかけたら警察へ」
などと看板もかかっている。
 でも、ここでくじけたらメタボ。
 公園の木々の緑を愛でる余裕もなく、歩きなのに、いかにもスポーツというように、両腕をふって、早足でぐんぐんいかなければならない。ダイエットってほんと難しい。

初出 「浜松百撰」2009年

 

©Jun NASUDA2009