青熊ラジオ

・・・・・・・・・・・・・・・・・那須田淳の Official web page
top     news     about me     blue bear     booklist     essay-days     essay-days2     essay-kids     essay-kids2     mail     blog     sitemap     event      
挫折、バナナダイエット     ベルリン熊に捧げるバラード     恋するマッチ     心に残るごちそう     万歩計     19パーセントの憂鬱     本のねずみ      

 「本のねずみ」

 

 昨年(10年)のクリスマスに、奥さんからねずみが本を読んでいる像がついた真鍮のローソク立てをもらった。なかなかしぶくて可愛い。どこかの蚤の市で手に入れてきたものらしい。本好きのことを「本の虫」なんていうけれど、ドイツ語ではLeseratte本のねずみ)というので、もちろんそれを表したものだ

ちなみにネットで調べてみたら、デンマーク語ではlaesehest(本の馬)というそうである。一方で、英語だと bookworm本の虫)で、こちらは日本語と一緒一説によると、英語の「本の虫」は、本を食べて生きるあの紙魚(しみ)のことらしい本がなきゃ生きていけないということだろうか? もっとも日本語のこの「本の虫」の語源は、英語からの翻訳だなんていう人がいるが、違う気がする。

 虫という字は、もともとは「蟲」と書き、昆虫のこともさすが、古代の道教などでは、元来「生命」そのものを指した観念的な言葉とされている。つまり人間のからだの奥底に潜んで蠢(うごめ)いているもの、という感じだろうか。

 

 それが表に出てきて、その人の心を良くも悪くも支配する…。「仕事の虫」「疳の虫」とか「弱虫」「腹の虫」などの「虫」と、は同じだと僕は思う。

 こんなふうに各国に同じような言い回しや、単語があって、それはそれで比較すると面白いのだけれど、ときどき困ることもある。

 先日、ベルリンの郵便局で、日本への書留を出したときのこと。封筒の中身を申告書に記入するように言われて、「手紙」と書こうとして、はっとしたのだ。ドイツ語では手紙はBriefである。でも、英語でブリーフっていえば、下着のパンツのことだ。スペルも同じBrief だったはず…。

 で、中身はブリーフなんて書くと、郵便局のこの窓口のお姉さんは、僕のドイツ語力を怪しんで、英語表記していると思いこみ、「げっ、この日本人、書留でパンツ送るのね、やだぁ、変態じゃないかしら」などと内心、思われやしないかと…。

 こういうことは、一度気になりだすと、もういけない。赤面して、おどおどしてしまうのである。

 これは、手紙でパンツじゃないですからね」などとわざわざ説明するのも、まるでミスター・ビーンみたいで、かえって怪しまれそうだし。、あせっているとうしろに並んでいる客から「はやくしろよ」的な目線がばしっときた。

そこで、えいっと中身はBrief と書いて、係りの顔も見ずに金を払い、家に帰って、いそいで英和辞典で調べてみたのだ男性用の下着のパンツBriefsとある。

やっぱり…」と思ったが

「あっ」。パンツは複数形で用いるとあるじゃないか

ほっと一安心。キッチンのイスにどかっとすわって、「手紙は二通入ってたけどさ、複数形にしなくてよかったよ」と家族に話すと、娘がちょっとしかめつらして、

でもパパ、ドイツ語だと、手紙の複数形は、Briefesじゃなくてe

 ドイツ語のできなさをずばり指摘されて、またがっくりである。

 

 

 

(このエッセイは、2011年に浜松百撰に掲載したものを修正しました)

 

©Jun NASUDA2011